ハローワークの求人票に記載されている募集内容と実際の労働条件が異なっているという苦情やトラブルが増えていることがわかりました。厚生労働省の調査では、求人票に関する苦情(約9,000件)の約40%が、求人票と労働条件の実態との相違です。

例えば、「付くはずの手当が付いていない」「正社員のはずが契約社員」「社会保険加入のはずが入れてもらえない」「事務職で採用なのに現場に配属された」など、様々なケースがあります。ハローワークへの相談に至らないケースもあるため、実際には水面下で相当数のトラブルが発生していると考えられます。

ハロワの求人票は労働基準法で定める労働条件の明示に該当しない 

実態と異なる求人票トラブルの原因として考えられるのが、ハローワーク求人の法律的な位置付けです。「職業安定法」では、ハローワークの求人票は、あくまで労働者を募集する際に提示する労働条件の目安であり、労働基準法で定める労働条件の明示(第15条)には該当しないとされています。そして、求人票の労働条件と労働契約締結時の労働条件に相違が生じるとわかった際には、速やかに紹介業者(ハローワークなど)へ知らせるように配慮することという程度に止まっています。

つまり、現在の法律では、求人票の内容が実態と異なっていたとしても、労働契約を締結する際に正しい労働条件を明示していれば問題がない、ということになります。しかし、採用時において労働条件の明示を行っていない会社も多く、求職者から労働条件の明示を求めるのも難しいのが現実です。

裁判例では、求人票の記載内容と実際の労働条件が異なることについて特段の合意がない場合には、求人票の記載内容が労働契約の内容として認められたケースがあります(千代田工業事件H2.3.8大阪高裁)。 

故意に虚偽の広告や条件を提示して募集を行った場合は罰則も

また、故意に虚偽の広告や虚偽の条件を提示して労働者の募集を行った者に対しては罰則が設けられており、6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります(職業安定法第65条8項)。 

ブラック企業が人を集めるために明らかに嘘の求人内容により募集し、労働条件の明示もないまま採用した場合は法律違反として罰則を科され、求人票に記載された内容が労働条件となる可能性が高くなります。

このような求人票におけるトラブルを起こさないためにも労働者は採用時に労働条件を確認することが必要です。採用される側からすると非常に聞きにくい内容ですが、労働条件の明示は使用者の義務ですので、勇気を持って聞いてみるべきでしょう。これに応じない会社であれば、最初から問題を秘めていると考えられます。

求人に関する法律の全般的な整備が求められる

1月5日に厚生労働省では、過酷な労働を強いるブラック企業対策を強化するために、残業代不払いなどの違法行為を繰り返す企業や、セクハラなどの男女雇用機会均等法違反、育児休業を取得させないといった育児・介護休業法違反で企業名を公表された場合は、新卒求人をハローワークで受理しないという制度を創設する方針を固めたと発表しました。 

ただし、中途採用や民間の職業紹介は規制の対象外となっており、求人トラブルを無くすためには求人に関する法律の全般的な整備が求められるのではないでしょうか。